医療保険とは?医療保険制度の基礎知識をわかりやすく解説
医療保険は、病気にかかったり、ケガをしたりしたときに、通院や入院、あるいは手術をする場合などに費用の負担を軽減することができます。誰でも起こりうる、病気やケガのリスクに備えられるのが医療保険ですが、大きく分けて2種類あるのはご存じでしょうか?
ここでは、病気やケガで治療を受ける際に利用できる「公的医療保険」と「民間の医療保険」についてまとめました。
いざというときに慌てないためにも、医療保険への理解を深めておきましょう。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
医療保険とは?
医療保険とは、病気やケガで通院や入院をしたときに、医療費の負担を軽減してくれる仕組みのことで、公的な医療保険制度と、民間の保険会社が提供する医療保険があります。
被保険者があらかじめ決められた保険料を支払って医療保険に加入することで、病気やケガの医療費を低めに抑えることができます。
■医療保険の仕組み
この医療保険には公的な制度としての「公的医療保険」と、民間の企業が商品として提供している「民間の医療保険」の2種類があります。
まずは、両者の特徴について見ていきましょう。
公的医療保険
公的医療保険とは、日本国民全員が加入し、病気やケガの際の医療費を一部負担する制度のことです。この制度を国民皆保険制度といい、ケガや病気になったときなどの医療費を支え合います。
会社に勤めている人であれば会社の健康保険、個人事業主であれば国民健康保険などに加入します。
健康保険と国民健康保険の違いは、以下のとおりです。
■健康保険と国民健康保険の違い
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健康保険 |
国民健康保険 |
加入者 |
会社員、公務員などと扶養家族 |
自営業、パート、アルバイトなど |
保険者 |
健康保険団体 |
市区町村 |
保険料の支払い |
勤務先と折半 |
全額自費 |
医療費の負担割合 |
原則として3割負担 |
原則として3割負担 |
傷病手当金 |
あり |
原則としてなし |
出産手当金 |
あり |
なし |
出産育児一時金 |
原則として50万円 |
原則として50万円 |
※2023年7月時点
公的医療保険は、年齢や所得によって自己負担の割合が変わります。それぞれの違いは以下のとおりです。
■公的医療保険の自己負担割合
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|
一般・低所得者 |
現役並み所得者 |
6歳未満 |
2割負担 |
|
6歳~69歳 |
3割負担 |
|
70歳~74歳 |
2割負担 |
3割負担 |
75歳以上 |
1割負担 |
なお、子どもが医療機関で診療を受けたときは、健康保険の自己負担分について助成を受けられる医療費助成制度が利用可能です。期間や金額、名称などは自治体により異なり、例えば、中学卒業まで医療費の自己負担分が全額助成される自治体もあります。
このほか、公的医療保険には、医療費の自己負担が重くなりすぎないようにするための高額療養費制度があります。医療機関や薬局の窓口で支払った金額が、ひと月(月の初めから終わりまで)の上限額を超えた場合に、その超えた金額分が支給されます。
例えば、30歳会社員、年収500万円(標準報酬月額41万円)、健康保険の窓口負担3割の人の1ヵ月の医療費が100万円だった場合、窓口負担は30万円です。しかし、高額療養費制度の申請をすれば21万2,570円が高額療養費として健康保険から支給され、実際の自己負担額は8万7,430円で済むことになります。
■高額療養費の上限額と支給額の計算例
※厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」をもとに作成
高額療養費制度について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
高額療養費制度をわかりやすく解説!医療費負担を軽減する方法とは?
民間の医療保険
民間の医療保険は、生命保険会社や損害保険会社といった民間の会社が提供している保険商品のことです。加入は任意で、個人の希望に応じた商品を選ぶことができます。
民間の医療保険では、契約時の保障内容に合わせて、病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取ることができるものが主流です。これらは、公的医療保険でまかなえないリスクに備えるもので、公的医療保険対象外の費用としては以下が挙げられます。
-
食事代や差額ベッド代
入院時には食事代や差額ベッド代が必要になります。差額ベッド代は4人部屋以下でプライバシーを確保できる部屋を利用する場合に必要な費用で、1日数千円から数万円になる場合があり、公的医療保険の適用外です。
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交通費
自宅から病院への交通費も公的医療保険の対象外です。近くの病院であれば大きな負担にはなりませんが、病院が遠方の場合、交通費の負担も大きくなります。
公的医療保険と民間の医療保険の違い
公的医療保険と民間の医療保険の違いは、目的が異なります。
公的医療保険は国が管理し、国民全員が必ず加入する制度で、基本的な医療を受けられることが目的です。一方、民間の医療保険はさまざまな保険会社が提供し、個人のニーズやリスクに合わせて保障内容を選択できるため、より具体的な病気などのリスクに備えます。
保険料の決まり方にも違いがあります。公的医療保険は年齢と所得に応じて変動しますが、民間の医療保険は保障内容や加入期間などで変動し、同じ条件でも、保険会社によって金額はさまざまです。
■公的医療保険と民間の医療保険の違い
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公的医療保険 |
民間の医療保険 |
目的 |
一定水準の医療を受けられるよう、医療費の負担を軽減 |
公的医療保険ではまかなえないリスクへの備え |
加入方式 |
義務(強制) |
任意 |
保障内容 |
全国民に平等 |
保険会社のサービスの中から自由に選択可能 |
保険料 |
年齢と所得に応じて変動 |
保障内容や加入期間などで変動 |
民間の医療保険で受け取れる給付金
民間の医療保険にはさまざまな種類があり、具体的な給付内容や給付金の額は、契約内容によって変わります。民間の医療保険で受け取れる給付金の種類については、以下のとおりです。
■民間の医療保険で受け取れる給付金の種類
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種類 |
内容 |
入院給付金 |
病気やケガで入院した際に支払われる給付金。「入院1日あたり◯◯円」という入院日額タイプと、「入院1回あたり◯◯円」という一時金タイプがある。近年は、入院日数の短期化が進み、一時金タイプの保険も多い。 |
手術給付金 |
契約内容によって定められた病気やケガによる手術を受ける際に支払われる給付金。所定の手術をした際、「1回につき◯◯円」、あるいは「入院日額の◯倍」といった形で給付金が支払われるタイプがある。 |
通院給付金 |
所定の条件を満たす通院を行った際に支払われる。 |
先進医療給付金 |
一般的には高額になりがちな先進医療を受けた際に、所定の要件を満たした場合、自己負担した先進医療にかかる技術料と同額が支払われる。 |
診断一時金 |
がんなど、所定の病気と診断され、給付要件を満たした場合に支払われる。 |
お祝い金 |
お祝い金などの名目で、一定期間給付金を受け取る事由が発生しなかった場合に支払われる。 |
民間の医療保険の保険料はどのように決まるのか
民間の医療保険の保険料は、主に以下のポイントによって左右されます。
■民間の医療保険の保険料が決まる主なポイント
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被保険者の年齢 |
被保険者(保険がかけられている人)の年齢が高くなるほど保険料が高額になる傾向がある |
保障内容 |
保障内容が充実するほど保険料が高額になる傾向がある |
保障期間 |
一般的に、一定期間のみ保障する定期型よりも一生涯を保障する終身型のほうが、保険料は高額になる傾向がある |
保険料払込期間 |
60歳や65歳で保険料の支払いが終了する保険は、その分、終身払よりも保険料が高額になる傾向がある |
満期保険金の有無 |
満期保険金や祝い金のある保険は保険料が高額になる傾向がある |
特約の内容 |
通常、特約を付加するほど保険料は高額になる傾向がある |
もし、現在加入中の保険料が高いと感じたときは、必要な保障以上の保険をかけてしまっていないか、払込期間の長さ、満期保険金の有無、特約の内容などを見直してみましょう。
医療保険の選び方については、以下の記事をご参照ください。
医療保険の選び方とは?ポイントや保障の内容、給付の種類を解説
民間の医療保険で備える費用の範囲
前述のとおり、民間の医療保険は公的医療保険でまかなえないリスクに備えるためのものです。入院・手術をした場合には、健康保険適用の医療費と、健康保険適用外の医療費、収入の減少分の3つの負担に備えなければなりません。
民間の医療保険ではどの負担に備えるのか、見てみましょう。
■民間の医療保険で備える費用の範囲(会社員などの場合)
民間の医療保険への加入が必要な人とは?
公的医療保険の保障内容が充実していることから、民間の医療保険への加入は必要ないと考える人もいるようです。
そこで、民間の医療保険への加入を検討したほうが良い人と、その必要性が低い人についてまとめました。
<民間の医療保険への加入を検討したほうが良い人>
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国民健康保険に加入している人
自営業者などが加入する国民健康保険には、病気やケガなどによって仕事ができず給与が減額または支払われない場合に支給される傷病手当金が原則としてないため、収入減に備える必要があると考えられます。
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貯蓄が少ない人
急な病気やケガによる医療費の支出増や収入減により、貯蓄で対応するのが難しい場合、民間の医療保険に加入しておくと安心です。
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将来の健康に不安がある人
身内に持病がある人がいるなど、将来の健康に不安がある場合は、民間の医療保険の加入を検討してもいいでしょう。不調になってから加入を検討するのではなく、元気なうちに備えておくことが大切です。
<民間の医療保険へ加入する必要性が低い人>
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加入している健康保険組合の保障が充実している人
健康保険組合によっては、月の医療費の自己負担上限が2万~3万円程度というところもあります。このような、保障が充実した健康保険に加入している人は、民間の医療保険に加入する必要性は低いでしょう。
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貯蓄がある程度ある人
支出の増加や収入の減少を貯蓄でカバーすることができる場合は、民間の医療保険に加入する必要性は低いといえます。
民間の医療保険の種類
民間の医療保険には、さまざまな種類があります。
検討中・加入中の保険が必要な保障をカバーできる商品かどうかを知るためにも、民間の医療保険の種類と、大まかな特徴を把握しておきましょう。
定期医療保険
定期医療保険は、一定の期間内において保障を確保できる保険です。
入院の短期化や通院治療の増加など、医療をとりまく状況は刻々と変化しています。定期医療保険に加入しておくことで、時節にマッチした保険を選択したい場合に更新したり、ライフステージの変化があったタイミングで保障内容を見直したりしやすくなります。
一方で、定期医療保険には、更新が設けられていることが多く、その更新のたびに更新時の年齢で保険料が計算されるものが多いため、結果として保険料が上がっていくものが多いです。また、加入や更新できる年齢には上限があるため注意が必要です。
終身医療保険
終身医療保険は、一生涯の保障を確保できる保険です。
基本的には、保険料が加入時から上がらないため、保険料の低い若い年代で加入しておくと、将来的にはお手頃な保険料で一生の保障が得られるというメリットがあります。
また、保険料の払込みは一定年齢までで、保障は一生涯続くというタイプもあるため、リタイア後の保険料の支払い負担を軽減したい人にも適しています。
一方で、年齢が若いうちは一般的な定期医療保険よりも保険料が高めであること、長く加入し続けることで、保障内容がその時代の医療の状況と合わなくなってしまう可能性があるというデメリットもあります。
終身保険については、以下の記事をご参照ください。
終身保険とは?メリット・デメリットと必要性をわかりやすく解説
がん保険
がん保険は、がんになった場合の保障に特化した医療保険です。がんによる入院や手術、診断、通院などの際に給付金を受け取れます。
保障範囲ががんに限られていることから、がんのみの保障を備えたい場合には一般的な医療保険に比べてお手頃な保険料で保障を確保できます。
女性向け医療保険(女性保険)
一般的に「女性保険」ともいわれる女性向け医療保険は、女性がかかりやすい病気への保障を特に手厚くした保険です。
女性向け医療保険では、「性別に関係のない病気による入院などでも給付金が支払われ、さらに女性特有の病気で入院した場合は手厚い保障が受けられる」といったタイプのものが多く見られます。
女性保険については、以下の記事をご参照ください。
女性保険とは?女性特有の病気を保障する医療保険の選び方を紹介
引受基準緩和型保険・無選択型保険
引受基準緩和型保険は、健康に関する告知項目が一般の医療保険よりも緩和された保険のことです。
また、無選択型保険は、健康に関する告知の必要がない保険となります。
原則として、民間の医療保険に加入する際には、健康状態の告知をしなければいけません。そのため、持病がある人や、大病をしたことがある人は、民間の一般的な医療保険に加入できない場合があります。
しかし、健康に不安があるからこそ、保険に加入したいという人もいるでしょう。そういう人のために、引受基準緩和型保険や無選択型保険があります。必ず加入できるというわけではないこと、一般的な医療保険よりも保険料が高くなる、特定の疾病や部位をわずらった場合は不担保の対象となるといった注意点もありますが、自身の健康面と保険の加入条件などを確認して検討してみましょう。
引受基準緩和型保険・無選択型保険については、以下の記事をご参照ください。
民間の医療保険を選ぶときのチェックポイント
続いては、自分に合った民間の医療保険を選ぶ際に、チェックしておきたいポイントをご紹介します。
給付金の額と給付条件
保険に加入する目的が、公的医療保険の不足部分をカバーすることである場合、もしもの際に支払われる給付金の額と、どのような条件で給付されるのかは必ず確認しておくべきポイントです。
保険期間
保険期間とは、いつからいつまでのあいだ保障が受けられるのかということです。終身の保障を確保するのか、一定期間のみで良いのか考えておきましょう。
保険料と支払期間
保険料がいくらなのかと、その保険料をいつまで支払うのかをチェックします。いつまで支払うのかは、主に保険料を死亡するまで支払う終身払いタイプと、60歳や65歳など一定年齢まで保険料を支払う有期払いタイプがあります。
また、せっかく保険に加入しても、保険料を支払い続けられずに解約することになると、その後の保障がなくなってしまいます。保険料は、支払いに無理のない範囲で収めましょう。
特約の種類や保険料
特約の種類を確認して、希望している保障をしっかりカバーできるか確認します。併せて、特約の保険料や支払い条件などもしっかり見ておきましょう。
掛け捨てか貯蓄性があるか
医療保険を検討するとき、保険料を掛け捨てにするか、貯蓄性がある保険にするか確認しましょう。
掛け捨て型の医療保険は、解約返還金(解約返戻金)などがない保険のことです。その分、同じ保障内容の貯蓄性がある保険に比べて保険料が低めに抑えられています。保険料を抑えながら、手厚い保障を受けたい人に向いています。
一方、貯蓄性がある保険は、もしものときの保障が受けられるほか、解約した場合の解約返還金や、満期を迎えた場合の満期保険金などが受け取れます。しかし、貯蓄性がある保険の月々の保険料は、同じ保障内容の掛け捨て型保険と比較すると高めです。また、早期に解約すると、受取金額が払い込んだ保険料の累計額を下回ることが多く、受取金額がない場合もあります。
なお、掛け捨てと貯蓄性のある保険は、一概にどちらが良いとはいえません。ニーズに合わせて選ぶことが大切です。
※貯蓄性のある医療保険は、解約返還金や満期保険金が払込保険料の累計額を下回る場合があります。
掛け捨て型保険と貯蓄性がある保険の違いについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。
掛け捨て型生命保険とは?貯蓄型との違いとメリット・デメリット
もしものときに備えて民間の医療保険の加入を検討する
医療保険には、公的医療保険と民間の医療保険の2種類があります。公的医療保険は国民全員が加入し、病気やケガで治療などをすることになった際に利用できます。
まずは、自分が加入している公的医療保険について、給付内容などを確認しておきましょう。その上で、給付金などの内容に不安を感じるようであれば、民間の医療保険で必要な金額をまかなえるようにしておくと安心です。
必要な保障額の考え方について不明な点がある場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)や医療保険を取り扱っている保険会社などに相談してみましょう。
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よくある質問
Q. 「公的医療保険」と「民間の医療保険」の違いとは?
医療保険には公的な制度としての「公的医療保険」と、民間の企業が商品として提供している「民間の医療保険」の2種類があります。公的医療保険はケガや病気になったときなどの医療費を支え合う制度のことです。一方、民間の医療保険は生命保険会社や損害保険会社といった民間の会社が提供している保険商品のことで、病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取ることができるものが主流です。
公的医療保険と民間の医療保険の違いについては、以下の項目をご参照ください。
Q. 民間の医療保険にはどのような種類がある?
民間の医療保険にはさまざまな種類があります。一定の期間内において保障を確保できる定期保険、一生涯の保障を確保できる終身医療保険、がんになった場合の保障に特化したがん保険のほか、一般的に「女性保険」ともいわれる女性向け医療保険が代表的です。また、健康に関する告知項目が一般の医療保険よりも緩和された引受基準緩和型保険や、健康に関する告知の必要がない無選択型保険もあります。
民間の医療保険の種類については、以下の項目をご参照ください。
Q. 民間の医療保険に加入したほうが良い人とは?
民間の医療保険への加入を検討したほうが良い人としては、傷病手当金が原則として受けられない国民健康保険に加入している人や貯蓄が少ない人、将来の健康に不安がある人などが挙げられます。
民間の医療保険への加入を検討したほうが良い人については、以下の項目をご参照ください。
井戸美枝
CFP(R)、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP社)などがある。
※この記事は、ほけんの第一歩編集部が上記監修者のもと、制作したものです。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
(登)C23N0137(2023.9.26)
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