介護保険制度とは?民間の介護保険との違いをわかりやすく解説
介護保険は、被保険者(保険がかけられている人)が要介護状態になったときなどに一時金や年金が受け取れる民間の生命保険のひとつです。民間の生命保険会社が提供している介護保険のほかに公的な介護保険制度がありますが、公的介護保険だけで介護費用をまかなえるとは限りません。そこで、民間の介護保険に加入することで、公的介護保険制度だけでまかなえない部分を補うことが可能になります。
この記事では、公的介護保険制度と民間の介護保険がどのようなものなのか、公的介護保険制度と民間の介護保険は何が違うのかという点について解説します。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
公的介護保険制度とは?
公的介護保険制度は、40歳以上の人が全員加入し、介護や支援が必要な状態になったときに所定の介護サービスが受けられる社会保険制度です。市町村と特別区(東京23区)が運営し、40歳以上のすべての人が被保険者となって毎月介護保険料を支払います。会社員の場合は、健康保険料と一緒に給与から引き去りとなることが一般的です。また、65歳以上になると年金から引き去られるか、もしくは納付書で市区町村へ個人的に支払うことになります。
公的介護保険の仕組み
公的介護保険の対象者や受給条件、受けられる介護サービスなど仕組みについて解説します。
公的介護保険制度の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの「第2号被保険者」に分けられます。第1号被保険者が要支援や要介護の認定を受けた場合、その原因を問わずいつでもサービスを受けられますが、第2号被保険者がサービスを受けられるのは、老化に起因する疾病(特定疾病)による場合のみです。具体的には、初老期の認知症や脳血管疾患などで要支援・要介護状態になった場合に限られます。
なお、公的介護保険制度の給付は、要介護認定を受けた利用者が1~3割の利用料を支払うことで介護サービスを受けられる現物給付です。自己負担の割合は所得によって異なります。
■公的介護保険の対象者と受給条件、保険料の徴収方法
横にスライドしてください
65歳以上の |
40歳から64歳までの |
|
対象者 |
65歳以上の人 |
40歳から64 歳までの健保組合、全国健康保険協会、国保などの医療保険加入者 ※40歳になると自動的に資格を取得し、65歳になると自動的に第1号被保険者に切り替わる |
受給要件 |
|
|
保険料の徴収方法 |
|
|
<老化に起因する16の疾病(特定疾病)>
-
がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
-
関節リウマチ
-
筋萎縮性側索硬化症
-
後縦靱帯骨化症
-
骨折を伴う骨粗鬆症
-
初老期における認知症
-
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
-
脊髄小脳変性症
-
脊柱管狭窄症
-
早老症
-
多系統萎縮症
-
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
-
脳血管疾患
-
閉塞性動脈硬化症
-
慢性閉塞性肺疾患
-
両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
※厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
公的介護保険の保険料
公的介護保険の保険料は、65歳以上の第1号被保険者と40歳から64歳までの第2号被保険者で計算方法が異なります。公的介護保険は、被保険者から徴収した保険料のほかに公費を財源にしているため、自治体によって金額が異なります。保険料の負担割合は、65歳以上の第1号被保険者負担分が23%、40歳から64歳の第2号被保険者が27%です。
また、勤務先の健康保険に加入している場合も、健康保険組合などで保険料の計算方法が異なりますので、計算方法などの詳細については各自治体や加入している保険組合に問い合わせてください。
※厚生労働省「介護保険制度の概要」2021年5月
介護保険で利用できる主な介護サービス
公的介護保険で利用できる主な介護サービスには、ニーズに合わせてさまざまあります。主なサービスは以下のとおりです。なお、詳細は自治体によっても異なりますので、住んでいる自治体などに確認しましょう。
これらのサービスは、介護サービス計画(ケアプラン)にもとづいて利用することができ、費用負担は1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)です。
■利用できる主な介護サービスの内容
横にスライドしてください
介護サービスの種類 |
介護サービスの内容 |
|
---|---|---|
自宅で利用するサービス |
訪問介護 |
訪問介護員(ホームヘルパー)が、入浴、排せつ、食事などの介護や調理、洗濯、掃除等の家事を行う |
訪問看護 |
自宅で療養生活が送れるよう、看護師が医師の指示のもとで、健康チェック、療養上の世話などを行う |
|
福祉用具貸与 |
日常生活や介護に役立つ福祉用具(車いす、ベッドなど)のレンタルができる |
|
日帰りで施設等を利用するサービス |
通所介護 |
食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供 |
通所リハビリテーション |
施設や病院などにおいて、日常生活の自立を助けるために理学療法士、作業療法士などがリハビリテーションを行い、利用者の心身機能の維持回復を図る |
|
宿泊するサービス |
短期入所生活介護 |
施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練の支援などを行う。家族の介護負担軽減を図ることができる |
居住系サービス |
特定施設入居者生活介護 |
有料老人ホームなどに入居している高齢者が、日常生活上の支援や介護サービスを利用できる |
施設系サービス |
特別養護老人ホーム |
常に介護が必要で、自宅では介護が困難な人が入所。食事、入浴、排せつなどの介護を一体的に提供(※原則要介護3以上の人が対象) |
小規模多機能型居宅介護 |
利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせて日常生活上の支援や機能訓練を行う |
|
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に提供する。訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービスの提供を受けることもできる |
※厚生労働省「介護保険制度について」
介護サービスを受けるには要介護認定が必要
公的介護保険制度のサービスを利用するには、介護を要する状態にあることを表す要介護認定(または要支援認定)を受ける必要があります。住んでいる自治体に要介護認定の申請をすると、介護認定調査員またはケアマネージャーの訪問調査や、医師の意見などをもとに「要支援(1~2)」「要介護(1~5)」が認定されます。
-
要支援(1~2)
要支援(1~2)とは、日常生活はほとんど自分で行うことができるものの、場合によっては支援が必要な状態のことです。どの程度の支援が必要かによって2段階に分かれ、認定に応じた介護予防サービスを受けられます。
-
要介護(1~5)
要介護(1~5)とは、日常生活全般を自分で行うことが難しく、何らかの介護を必要とする状態です。必要な介護の度合いによって要介護1~5の5段階に分かれ、認定に応じた介護サービスを受けられます。
■要介護度別の身体状態の例と利用できるサービスの目安
横にスライドしてください
要介護度 |
身体状態の例 |
利用できるサービスの目安 |
要支援1 |
要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態 |
週2~3回のサービス |
要支援2 |
生活の一部について部分的に介護を必要とする状態 |
週3~4回のサービス |
要介護1 |
生活の一部について部分的に介護を必要とする状態 |
1日1回程度のサービス |
要介護2 |
軽度の介護を必要とする状態 |
1日1~2回程度のサービス |
要介護3 |
中等度の介護を必要とする状態 |
1日2回程度のサービス |
要介護4 |
重度の介護を必要とする状態 |
1日2~3回程度のサービス |
要介護5 |
最重度の介護を必要とする状態 |
1日3~4回程度のサービス |
引用:公益財団法人生命保険文化センター「公的介護保険で受けられるサービスの内容は?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター」
介護保険被保険者証の交付
介護保険被保険者証は、介護サービスなどの利用をするために必要な書類です。
65歳になると被保険者一人ひとりに郵送されます。40歳から64歳までの第2号被保険者の場合、要介護・要支援の認定を受けた人や交付申請をした人に交付されます。
要介護認定と介護サービス利用までの流れ
要介護認定(要支援認定)を受け、介護サービスを利用するまでの流れは以下のとおりです。基本的には、介護または支援の認定を受けるための申請をし、認定されたらケアマネージャーを探して介護サービス計画書(ケアプラン)を決定し、プランに則った介護サービスを利用することになります。
■要介護認定から介護サービス利用までの流れ
※厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 サービス利用までの流れ」
公的介護保険制度では補えないもの
公的介護保険制度では、要介護認定の段階に応じた支給限度額が決まっています。例えば、要介護1の1ヵ月あたりの支給限度額は16万7,650円程度です。この限度額以内であれば、利用者の自己負担額は介護サービス費用の1~3割です。しかし、支給限度額を超えた分は全額自己負担になります。
また、公的介護保険制度のサービスは、あくまでも要介護者の最低限の日常生活を支援することを目的としています。サービスが日常的な家事の範囲を超えていたり、サービスを行わなくても日常生活に支障がなかったりする場合は対象とならないため注意しましょう。例えば、外出時の送迎のほか、同居家族など要介護者本人以外のための調理や洗濯、買い物、大掛かりな掃除などは、公的介護保険制度の適用外になります。
民間の介護保険とは?
民間の介護保険とは、民間の生命保険会社が扱う保険です。生命保険会社が各社の約款で定めている「介護が必要な状態」になったときに、一時金や年金の給付対象となります。
介護が必要な状態とは生命保険会社によって異なり、公的介護保険制度の要介護認定と同じ介護保険もあれば、独自の基準で判断する介護保険もあります。また、要介護認定が非該当となった人でも一時金や年金の給付対象となるケースがあり、公的介護保険制度だけでは対応できない経済的負担に備えることが可能です。ただし、逆に公的介護保険制度での要介護認定を受けても民間の介護保険の給付対象にならないケースもあるため、各保険会社の給付要件を確認しておくことが大切です。
なお、民間の介護保険の一時金や年金は、要介護状態が所定の期間、継続していることなどが給付要件となり、会社によって異なります。最近では、認知症に特化した認知症保険など、特定の疾病に備えるための民間の介護保険もあります。
認知症保険については、以下の記事をご参照ください。
民間の介護保険に加入するメリット
民間の介護保険に加入するメリットは、介護にかかる経済的な負担を軽減できることです。公的介護保険制度はデイサービスなどの現物支給のため、適用されるサービスを受けるときにしか利用できません。さらに、要介護度によって支給限度額が定められており、限度額を超えた分は原則として全額自己負担となります。民間介護保険に加入していれば、一時金や年金などでこれらの経済的負担を軽減することができるでしょう。一時金や年金の使い道は自由なので、公的介護保険制度の適用外となるサービスにも利用可能です。
また、民間の介護保険は、保険会社が定める基準を満たせば、公的介護保険の対象者や対象疾患以外でも一時金や年金の給付対象となります。例えば、40歳以下の人や64歳以下で特定疾病以外の人、要介護認定を受けていない人でも、給付条件にあてはまっていれば一時金や年金の給付対象となります。
民間の介護保険に加入するデメリット
民間の介護保険のデメリットとしては、保障内容に応じた保険料を負担しなければならないことが挙げられます。また、民間介護保険の給付条件は生命保険会社によって異なり、要介護状態になっても必ずしも一時金や年金の給付対象となるとは限りません。
また、公的介護保険制度と同じ給付要件の介護保険であっても、今後、公的な介護保険制度が改正された場合は、それに合わせて給付要件や保障内容が変更される可能性もあります。
公的介護保険制度と民間の介護保険との違い
公的介護保険制度と民間の介護保険は同じような名称なので、混同しないように注意しましょう。公的介護保険制度と民間の介護保険は、主に以下のような違いがあります。
■公的介護保険制度と民間の介護保険の主な違い
公的介護保険制度 |
民間の介護保険 |
|
給付内容 |
現物給付(介護サービス) |
現金給付 |
加入年齢 |
40歳以上すべての人が被保険者 |
加入できる年齢は保険会社により異なる |
保険料の払込期間 |
保険料は一生涯支払う(要介護認定の有無にかかわらず) |
契約で定められた期間のみなど、保険商品が定めた条件により異なる |
給付内容の違い
公的介護保険制度と民間の介護保険の違いとしては、給付の方法が挙げられます。公的介護保険制度は前述のとおり、要介護認定を受けた利用者に介護サービスが給付される現物給付です。
一方、民間の介護保険は、被保険者が保険契約に定めた要介護状態になると、一時金や年金を受け取れる現金給付です。給付金の使途には制限がなく、公的介護保険制度の対象にならないサービスや、介護のために介護者の収入が減少した場合の保障にも充てることができます。
加入できる年齢の違い
公的介護保険制度と民間の介護保険は、加入できる年齢が異なります。公的介護保険制度は市町村と特別区(東京23区)が運営する強制加入の社会保険で、40歳になるとすべての人が被保険者となります。
民間の介護保険は、40歳未満でも加入することが可能です。なお、契約できる年齢は各保険会社によって異なります。
保険料の払込期間の違い
保険料も、公的介護保険制度と民間の介護保険では異なります。公的介護保険制度では、加入者は原則として一生涯保険料を支払います。要介護認定を受けて給付を受けていたとしても、保険料の負担はなくなりません。
一方、民間の介護保険で保険料を払い込むのは、契約で定められた期間のみです。また、一時金や年金を受け取る状態になった場合、その後の保険料は払込免除となることが一般的です。
民間介護保険を上手に利用して介護の費用負担に備えよう
民間の介護保険は、公的介護保険制度ではまかなえない経済的負担に備える保険です。公的介護保険制度適用外のサービスや福祉用具が必要になったときに、民間の介護保険に加入していれば経済的な負担を軽減することができるでしょう。
民間の介護保険の保障内容や一時金・年金の支払要件は生命保険会社によって異なるため、しっかり確認したうえで加入を検討することが大切です。介護保険の選び方がわからない場合は、生命保険会社やFP(ファイナンシャルプランナー)などに相談することをおすすめします。
お得な情報やお知らせなどを配信しています! LINE友だち追加
よくある質問
Q. 介護保険の対象となるものは何ですか?
A. 公的介護保険制度で介護保険の加入対象となるのは、すべての40歳以上の人です。40歳以上の人からの保険料や、公費により、被保険者が介護や支援が必要な状態になったときに所定の介護サービスが受けられます。公的介護保険制度の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの「第2号被保険者」に分けられ、受給要件や保険料などが異なります。
介護保険の仕組みについては、以下の項目をご参照ください。
Q. 介護保険料は何歳から何歳まで払いますか?
A. 公的介護保険の保険料は、40歳から一生涯払い続けます。保険料は住んでいる自治体や加入している健康保険などで異なります。一方、民間の介護保険では、保険料は契約で決められた期間までです。
保険料の払込期間については、以下の項目をご参照ください。
森島静香
FPサテライト株式会社所属。京都出身、大阪在住。人材紹介会社勤務。キャリアカウンセラーとして顧客の転職活動を支援中。中立の立場で顧客の相談にのる中で、お金に関するより専門的な知識を身につけたいと考え、FP資格を取得。プライベートでも2児の母として、育児を経験しており、顧客目線でわかりやすい情報を届けるFPを心掛けている。
所有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、TOEIC 925点
※この記事はほけんの第一歩編集部が上記監修者のもと、制作したものです。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※2023年10月時点の介護保険法・身体障害福祉法にもとづいて記載しています。
(登)C23N0206(2023.12.26)
保険のご相談・お問い合わせ、
資料請求はこちら
お客さまの「一生涯のパートナー」として第一生命が選ばれています。
皆さまの人生に寄り添い、「確かな安心」をお届けいたします。
第一生命では、お客さまのニーズに応じて様々なプランをご用意しております。
月~金 10:00~18:00 土 10:00~17:00
(祝日・年末年始を除く)